三社大祭山車組

次世代の八戸三社大祭〜山車アーティスト夏坂和良さん

自由な造形空間に遊ぶ山車を


山車アーティスト夏坂和良さん01

山車絵師・山車アーティストの夏坂和良さんは、吹上での連続7回の記録をはじめ合わせて13回の最優秀賞を獲得している名実ともに山車製作者の第1人者だ。
「母親が言うにはオギャーと生まれた時から山車の絵を描いていたそうです」という夏坂さん。初めてのお祭りの記憶は、祭り好きの母親が絵本を読むように新聞の「山車物語」の記事を読んでくれたこと。
今と違って町内のしばりが固く排外的だった当時、小中野町に生まれた夏坂少年は、大好きな祭りの山車小屋に参加することが出来ませんでした。
山車への憧れが募る夏坂さんは市観光課主催の「ミニ山車コンクール」小学2年生からに出展するようになりました。7回出展して7回最優秀賞受賞。その才能が山車組の目に止まり、二廿六日町山車組に呼ばれ17歳で製作責任者となります。けれどもやっても最優秀賞が獲れず、勉強のため東京の美大に進学し、歌舞伎、文楽、能、京劇、現代劇と様々な舞台美術を貪欲に吸収してきてきます。歌舞伎座の舞台美術の道もありましたが、八戸に戻り、以降40年以上もの長きにわたり山車製作に関わってきました。

その夏坂さんが言いいます。「六日町など例外もあるけど、主役が必ずセンターにあって回転が開いてせり上がるという今のような山車の形は、様々なスタイルがあった昔と比べてあまり面白くない。昔は一艘船があったり、黒岩があったり楽しかったし、面白かった。今はどれも同じに見える」
何度も最優秀賞に輝いた夏坂さんがそう言うことに正直驚きました。
自由な発想で山車作りをしたい気持ちはある?
「あります、あります。今はこう作らないといけないという感じの審査規準があって、なかなか賞をくれないという――。町内山車組もやっぱり賞を獲りたいから私に声をかけてくれるので、その枠内でやるしかない。これまでと全然違っても、それが評価されるのであれば、もっと自由に発想したい。大きさも様々あっていいんじゃないかと思います。山車作りが進歩するもしないも審査の影響がとても大きい」
山車絵師・山車アーティストを名乗っている夏坂さん。昭和50年代に発足した八戸山車製作研究会で郷土研究家の故正部家種康さんから山車絵師という称号をいただきました。しかし作画だけでなく山車全体を製作している夏坂さんは、近年「山車アーティスト」を名乗っています。よく比較されるのは、青森にはプロのねぶた師が存在し、八戸には山車作りで生計を立てるプロはいないこと。夏坂さんはもっともそれに近いお一人だと思いこんでいましたが、全く違う実状にも驚かされました。

ユネスコの世界遺産登録が話題の中で、神事なのか観光なのか、夏か秋かという開催時期の問題が熱く議論されます。
夏坂さんは「一番大事にしなくてはいけないのが神事だと思うし、秋に開催した方がいいと私は思う」ときっぱり。
「お囃子にしろ衣装にしろ秋向けなので真夏にやるのは無理がある。観光的にも今は、むしろ損。ねぶたや盛岡のさんさ踊りと時期をずらしたほうが、お客さんをもっと呼べるはず」
「お祭りの人たちも三神社を巡らない人たちがほとんどだと思うんですよ。一般市民も三社を巡って拝むということが一番大事です。観光客の方にも三社を巡ってもらって、例えばスタンプもらって最後に何かひとつ記念品をもらえる、神社に焦点を当てるイベントを考えないといけないと思うんですよ。山車といっても、神社そのものが潤ってもらわないと三社大祭が成り立たない。」
山車作りの名人夏坂和良さん提言に思わずうなづきます。

ユネスコ登録する30数件の8割ぐらいの祭りがそれぞれ山車会館を持っているのに、八戸では未だ実現されていません。
「山車会館にミニチュア模型で岩山車、波山車、二重欄干などを作り、山車の年表のようなものを提案した有識者の方もいました。復元できるなら、そっちの方を作りたいです(笑)」と話す夏坂さんですが、運行ルートにも提言があります。
お通り最後のゆりの木通り、長者まつりんぐ広場に入って場内をぐるっと一周する。そこを審査会場にして、観覧席も設置しPRコーナーやグッズ販売もする。歌舞伎の花道ですよ」
「青森で開催された東北六魂祭でも、ねぶたのお囃子は沿道に向かって笑顔をいっぱい見せて、楽しんでもらう。ショーマンなんですね。八戸の場合は、少し恥ずかしそうにしてヤーレ、ヤーレと。東京ドームでも山車はボーボーと煙上げて勢いがいいけど、引き子やお囃子はやや素人くさくて温和しい。これからは、もっと魅せる工夫が必要だし、PRで東京とかに行く時にはショーマン的な編成チームが必要ではないのかな」
まだまだ現役として作ってみたい題材がたくさんあります。
「オペラを山車にするとか韓国の題材など、やりたくて準備はしています」
夏坂和良さんに一度、三社大祭の総合プロデュースをやってほしくなりました。

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