八戸学院大 大谷真樹⑫ チャオ! イタリア式で行こう!

 チャオ!少しばかりイタリアを堪能したからとにわかイタリアかぶれなのである。何と言ってもイタリア人の能天気さとアバウトさには参った。生まれ変われるものならばイタリアの片田舎の酒場のオヤジにでもなりたい。

 この夏に、もう二度と出場しないと誓っていた世界で最も過酷な山岳自転車レースHaute Route Dolomite 2015によせば良いのにまた出場してきた。2013年のAlpsルートと同じスイスのジュネーブをスタートするが、七日後のゴールは、雪の高山ドロミテ山塊を超えイタリアの水の都ベニス。その距離は延べ930キロで、登る高度は延べ23000メートルになり前回よりも更に過酷なコース設定だった。2013年は、初出場であり日本チームの一員ということもあり強いプレッシャーを抱え、半年以上も禁酒するなどストイックなトレーニングを経て完走したが、心身ともに疲れ果ててしまった。真面目な東北人のDNAのせいかもしれない。

 今回は二回目の参加でもあり、精神的な余裕のもと景色や他国の選手との交流など楽しむ事が出来た。しかも、なんと毎晩地元の美味しい食とワインを満喫。普通はゴールしたら泥沼のようにベッドで気絶するのだが、恐るべし八戸の夜練習で鍛えた我が肝臓。
 スタートして三日はスイスアルプスを登る。道路は整然とし、工事作業者は黙々と工事の手を休めない。沿道の家は規制で統一されているのか濃い褐色の木造の家に窓には美しい花のポット、自慢げにスイス国旗がたなびいている。ホテルの食事やルールもとてもきっちりしていて例外を許してくれない。スタッフは小難しそうなゲルマン系の顔立ちだ。

 四日目イタリア国境を超えたとたんに、道路は修繕予算が無いのか最悪な悪路、修繕している工事作業員は自転車レースの応援でまったく仕事している気配は無い。観光ポイントでは、陽気な酔っぱらいのおじさん達がデカい声で「アレ!アレ」と応援してくれる。
 沿道の家々はとたんにカラフルになり、看板、旗、なんでもありになる。このレースは国際大会であるがイタリアに入ったとたん距離表示がいい加減になってきた。選手の命にも関わる水の補給地点に辿り着いたら「水は無くなったよ」、あと5キロの標識が9キロ登っても次の補給地点が現れない。ついに寛容なアメリカ人選手も激怒し、恐らく似たようなアバウトなはずのスペイン人選手も「おい!いいかげんだ」「私の走るエネルギーが無くなってしまったじゃないか、どうしてくれる!」と詰め寄っていた。運営スタッフの返事は「だってここはイタリアだぜ」最高の返答である。誰もが納得して無口になった。かのローマ大帝国を築いた優秀な民族はどうしてしまったのだろう。

 全てがいい加減。でも陽気で悪気無し。お金がなくても心配しないで昼からワインを飲んでいる。世界の動向なんぞ関係ない、わが故郷が最高。マンマの料理は世界一、悪いのは政治家だ、乾杯!あまりにも私の見たイタリアはイタリア的で嬉しくなってしまった。イタリア最高である。

 大好きな映画「ニューシネマパラダイス」をふと思い出してしまった。イタリアの田舎の島を出て都会で成功した主人公が、町を飛び出せなかった仲間を見るまなざし。不憫と思うのか、変わらない町だけど平和な暮らしを続ける仲間を羨ましく思うのか。複雑な心境を描いた名作だ。
 もしかしたら、私も主人公ジョジョと同じく、ストレスを抱えない生き方、土地の暮らしに心のどこかで憧憬を抱いているのかもしれない。

 生真面目な東北人の気質、耐える事をよしとしてきた我ら八戸人。もう少し、気楽にアバウトに暮らそうではないか。するととても豊かで幸せな北の楽園になるにちがいない。
「なんでこんなに肴と酒が旨くて人がいいの?」「だってここは八戸だぜ」チャオ!

 この記事は、八戸マガジン『ユキパル21』最新号に掲載されています。お求めは→こちら

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